「要らなくなるSaaS」より難しい、「残すSaaSをどう判断するか」
AIが既存のSaaSを代替する——この流れは多くのビジネスパーソンが肌感覚として持っているはずだ。しかし実際にSaaSを棚卸ししようとすると、「何を残して何を切るか」の判断基準があいまいなまま、議論が止まってしまうケースが少なくない。注目すべきは「AIに代替されるかどうか」という単純な二項対立よりも、その判断プロセス自体の難しさにある。今回公表された実態調査は、その難しさを数字として可視化している点で示唆に富む。
8割が「見直し必要」と感じながらも、AI代替を阻む現実
エイトレッドが「AI時代に生き残るSaaSの条件に関する実態調査」の結果を公表した。調査によると、約8割がSaaSを見直す必要性を実感していることが明らかになった。一方で、実際にAIで代替することの難しさも同時に示されており、「必要性の認識」と「実行の困難さ」のギャップが浮き彫りになっている。また、SaaS導入が失敗に終わる要因についても調査結果として示されており、単に「AIに置き換えれば解決する」という話ではない複雑さが見えてくる。
IT部門だけでなく、現場の業務担当者こそが直面する選択
この調査結果が影響するのは、SaaSの契約管理をするIT部門や情報システム担当者だけではない。日常的にSaaSを使って業務を回している現場の担当者、そして導入の意思決定に関わる経営層や部門マネージャーにとっても、切実な問いとなる。「今使っているこのSaaS、来年も契約を続けるべきか」という判断は、現場の生産性に直結するからだ。特に中堅・中小企業では、IT専任担当者が少なく、現場担当者が意思決定を兼ねるケースも多い。そうした環境では、判断軸の欠如が契約の惰性的な継続やコスト肥大化につながりやすい。
日本企業のSaaS見直しに「AI代替」という軸が加わった意味
日本企業においてSaaSの見直しが議論されるとき、従来は「使われていない機能へのコスト」や「他ツールとの重複」が主な理由だった。今回の調査はそこに「AIで代替できるか否か」という新たな評価軸が加わったことを示している。しかしAI代替の困難さが同時に示されている点は重要で、「AIがあれば何でも置き換えられる」という楽観論への警戒も必要だ。業務プロセスへの深い組み込みや、社内データとの連携度合いによっては、AIへの切り替えコストがSaaSの継続コストを上回る場面も十分ありうる。日本企業特有の稟議フローや承認文化と深く結びついたSaaSほど、代替の難度は高くなる傾向がある。
調査が示す「失敗要因」、SaaS刷新を検討する前に確認すべきこと
調査ではAI導入やSaaSの見直しが失敗に終わる要因も示されている。この点は、今まさにSaaSの棚卸しやAIツールへの移行を検討している企業にとって見落とせない。具体的にどの要因が挙げられているかを把握し、自社の状況と照らし合わせることが、判断の精度を高める第一歩となる。ツールの選択以前に、「なぜ今のSaaSが使われているのか」「誰がどの業務に使っているのか」を現場レベルで棚卸しできていない場合、AI代替への移行判断は根拠のない直感頼みになりやすい。調査結果はその準備不足の危うさを間接的に示していると読める。
「見直す」と「切り替える」の間にある判断コスト、誰が引き受けるのか
8割がSaaSの見直しを必要と感じているという数字は、裏返せば多くの組織がまだ見直しに着手できていないことを意味する。その背景にあるのは、AI代替の技術的困難さだけでなく、「誰が判断し、誰が責任を持つか」という組織的な問題でもある。SaaSの契約は往々にして部門ごとにサイロ化しており、全社最適の観点から棚卸しをしようとしても、権限と情報が分散している。結局のところ、「SaaS is dead」という問いへの答えは技術論だけでは出ない。AIで代替できるかどうかという問いと同時に、「判断できる体制が社内にあるか」という問いを自社に向けることが、今この局面での実質的な起点になる。
本記事は公開情報をもとに、NEWGATA編集部で確認のうえ掲載しています。
参照元
- ITmedia AI+ — AIで要らなくなったSaaS、要るSaaSは、どれ? 日本の「SaaS is dead」の実態(2026-06-19)

コメント