「AIを使えば職員が減っても大丈夫」という期待の前に確認すべきこと
人口減少と財政制約のなかで、地方自治体が「生成AIで業務を維持する」という流れは耳触りがいい。だが実際には、どのAIをどの業務に、どんな体制で組み込むかという判断が問われる。茨城県鹿嶋市が取り組んだのは、その判断を一つひとつ積み上げる地道なプロセスだ。「AIを導入した」という表面的な事実より、どの課題に対してどう設計したかという中身こそが、他の自治体やビジネス現場への示唆になる。
鹿嶋市が選んだ構成——公式WebサイトとClaudeの組み合わせ
鹿嶋市が最初に着手したのは、公式Webサイトと「Claude」(Anthropic社の大規模言語モデル)を連携させた市民対応業務の改善だ。市のWebサイトに掲載された情報をClaudeが参照し、市民からの問い合わせに応答する仕組みを構築した。これにより、限られた職員数では対応しきれなかった問い合わせ業務の負担を軽減することを目指している。
さらに鹿嶋市は「Claude Code」を活用した内製化にも踏み出した。Claude Codeはコード生成・編集を支援するAIツールであり、外部ベンダーに依存せずに職員自らがシステムを改修・開発できる体制を目指すものだ。外注コストの削減だけでなく、改修スピードや現場ニーズへの対応力という点でも、内製化は自治体DXの重要な選択肢になりつつある。
この取り組みが直接影響するのは誰か
最も直接的に影響を受けるのは、鹿嶋市の職員と市民だ。職員にとっては、定型的な問い合わせ対応にかかる時間が減り、より判断を要する業務に集中できる可能性がある。市民にとっては、Webサイトを通じて必要な情報へアクセスしやすくなることが期待される。
一方で、鹿嶋市の事例は他の地方自治体にとっても参照点になる。職員数や予算が限られた自治体が生成AIを業務に取り込む際、「どのAIを、どの窓口業務に、どう組み込むか」という具体的な設計の参考になるからだ。また、外部システム会社への依存から脱却し、Claude Codeで内製化を進めるアプローチは、自治体の情報システム担当者にとって現実的な選択肢として検討の俎上に上がりうる。
日本の行政現場でClaudeを使うことの実際的な意味
日本の自治体がClaudeを活用する場合、まず問われるのは「公式Webサイト上の情報をAIがどこまで正確に参照・回答できるか」という精度の問題だ。鹿嶋市は公式Webサイトの情報を参照元としてClaudeに使わせることで、回答の根拠を自治体が管理するコンテンツに限定するアプローチを取っている。これはAIが誤った情報を生成するリスク(いわゆるハルシネーション)をある程度抑制する設計思想だ。
Claude Codeによる内製化についても、「AIがコードを書く」という側面だけでなく、それを活用できる職員のリテラシーをどう確保するかという課題が伴う。鹿嶋市がどのように職員教育や運用体制を整えているかは、同様の取り組みを検討する自治体が注視すべき点だ。
鹿嶋市モデルの不確実性——スケールするかどうかはまだ見えない
現時点では、この取り組みが市民対応業務の負担をどれほど定量的に削減したかは明らかにされていない。AIが市民の問い合わせにどの程度の精度で回答できているか、対応できないケースをどう処理しているか、といった運用上の詳細も今後明らかになる部分だ。
また、Claude Codeを使った内製開発は、職員のスキルや開発リソースに依存する部分が大きい。鹿嶋市の職員規模や体制がどの自治体にも当てはまるわけではなく、内製化モデルの横展開には条件がある。「自治体でもできた」という事実と、「自分たちにも適用できる」かどうかは切り分けて考える必要がある。
NEWGATAが見る鹿嶋市モデルの本当の意味
鹿嶋市の取り組みで注目すべきは、AIの導入先として「市民向けの表層」と「職員が使う内部開発」の両方を同時に動かしている点だ。多くの自治体AI活用が、チャットボットの設置か、職員の文書作成補助のどちらか一方にとどまるなかで、Claudeを市民対応の接点に置きつつ、Claude Codeで内製化まで踏み込むのは、設計としての一貫性がある。外部ベンダー依存を減らしながら、市民接点のAI化も同時に進めるという方向性は、限られたリソースで最大の自律性を目指す戦略として読むことができる。
ただし、ここで強調したいのは、この事例が「生成AI導入の成功モデル」として確定したわけではないという点だ。重要なのは、鹿嶋市が「何のためにAIを使うか」を業務課題から逆算して設計しようとしていることだ。AIツールの選定より先に、どの業務のどの非効率を解消したいかを言語化できているかどうか——それが、鹿嶋市の事例が他の自治体やビジネス現場に突きつけている本質的な問いだ。ツールの名前より、その問いに答えられているかどうかが、AI活用の成否を分ける。
本記事は公開情報をもとに、NEWGATA編集部で確認のうえ掲載しています。
参照元
- ITmedia AI+ — 茨城県鹿嶋市は「公式Web×Claude」で市民対応をどう変えた? Claude Codeで内製化も(2026-09-03)

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