カクヤスが「誰も読めない30年物の基幹システム」に生成AIを当てた、その結果と現場の工夫

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「動いているが、誰も中身を知らない」という状態の本当の怖さ

システムが壊れているわけではない。毎日業務は回っている。しかし、なぜそのロジックになっているのか、どんな条件分岐が埋まっているのか、誰も説明できない——。この状態を「問題なし」と見るか「危機」と見るかで、企業の判断は大きく分かれる。

酒類・飲料の配送を手がけるカクヤスが直面していたのは、まさにその問題だった。約30年にわたって積み上げられてきた基幹システムは、現役で稼働してはいるものの、その内部を把握している人間がいない「ブラックボックス」と化していた。改修しようにも影響範囲がわからず、手が出せない。こうした状況は「レガシーシステム問題」として多くの企業に共通するが、カクヤスはこれに生成AIを使って向き合った。

カクヤスが試みた「AIによるシステム解読」の具体的な進め方

カクヤスが取り組んだのは、長年の運用で蓄積されたシステムのコードやドキュメントを生成AIに読み込ませ、業務ロジックを言語化・整理させるというアプローチだ。ただし、AIに丸投げしたわけではない。ここで鍵になったのが、現場の業務知見との組み合わせだ。

AIが出力した解析結果を、実際の業務を知る担当者が検証・補正することで、精度を高めていった。さらに重要だったのが、「AIを制御する技術」の確立だ。生成AIは指示の与え方(プロンプト)によって出力の質が大きく変わる。カクヤスは、どのようにAIに問いかければ正確な解析が得られるかというノウハウを、試行錯誤のなかで積み上げた。単にAIを使うのではなく、AIを使いこなすための方法論を内製化したことが、このプロジェクトの核心にある。

基幹システムの刷新を検討している企業にとって何が変わるのか

この取り組みが注目される理由は、カクヤス固有の話にとどまらないからだ。老朽化した基幹システムを抱える企業は多く、その多くが「触ると何が起きるかわからない」という理由で塩漬けにしてきた。そのブロッカーを解消する手段として、生成AIによるコード解析・ドキュメント生成のアプローチが現実的な選択肢として浮上してきた。

特に影響が大きいのは、システムの内製化・刷新を検討しているIT部門や、DX推進の責任を持つ事業部門だ。これまで「移行コストが読めない」「要件定義ができない」という理由で先送りされてきたプロジェクトに、再検討の余地が生まれる可能性がある。

日本企業の現場で同じアプローチを取るとき、見落としやすいこと

カクヤスの事例は日本語環境・日本企業の商習慣のなかで実施されており、国内企業にとって参照しやすい先行事例という点で意味がある。ただし、そのまま応用できるとは限らない。

生成AIによるコード解析の精度は、対象システムの言語・構造・ドキュメントの整備状況によって異なる。また、カクヤスが成果を上げた背景には「業務知見を持つ人材がAIの出力を検証できた」という前提がある。現場の業務知識が属人化・消失しているケースでは、AIが出力した解析結果を誰が正しいと判断するのかという問題が残る。AIの解析精度そのものより、「人間側の検証能力」がボトルネックになり得る点は、導入前に整理しておきたい。

「AIを制御する技術」を誰が持つか、という問いが次の分岐点になる

カクヤスの事例でもう一つ重要なのは、AIを制御するノウハウを外部ベンダーに委ねるのではなく、自社で確立したという点だ。プロンプト設計や出力検証のプロセスを内製化できるかどうかは、今後のAI活用の幅を大きく左右する。

「とにかくAIを導入した」という段階から、「AIをどう使いこなすか」の段階へ。カクヤスの取り組みが示すのは、その移行が技術の問題である以上に、組織としての学習能力の問題だということだ。同様の課題を抱える企業がこの事例から問うべきは、「生成AIは使えそうか」ではなく、「自社にAIの出力を検証・制御できる人材と仕組みがあるか」という問いのほうが本質に近い。

本記事は公開情報をもとに、NEWGATA編集部で確認のうえ掲載しています。

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